言葉の意味を間違えて覚えてしまっていると、大切な場面で話の意味が通じない・・・相手に対して失礼になってしまう・・・といった思わぬ誤解を招いてしまうことがありますよね。
そんな事態を出来る限り回避するためには、言葉の意味を理解し、正しい使い方をする必要がありますから、今回は誤用されていることが多い言葉の中からなし崩しという言葉をピックアップして説明していきます。
なし崩しと聞けば、ネガティブなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
本来の使い方や意味を誤用されていることの多いなし崩しという言葉ですが、なし崩しの意味、語源、正しい使い方とは・・・?
なし崩しの本来の意味、その語源、正しい使い方を例文とともにご紹介していきたいと思います
誤用されやすい「なし崩し」
なし崩し・・・というと、「うやむやにすること」「曖昧にすること」「その場の勢いで物事を一気に進めてしまうこと」などといった意味をイメージする方は多いのではないでしょうか?
実際にそういった使い方をされていることもあるなし崩しという言葉なのですが、それらは誤用なのです。
「崩」という文字からそういった意味を連想させてしまいがちですが、実は全く違う意味をもつ言葉で、その語源を知るとなるほど!と納得する面白い言葉なのです。
「なし崩し」の意味とは?
なし崩しとは、物事を少しずつ変えていき、そのまま始末してしまうことなどの意味の表現で、元々は借金を少しずつ崩していく(返済していく)ことで、結果的に全て返済することを意味していました。
そこから転じて、物事を少しずつ片づけていくという意味に変化していったのがなし崩しという言葉なのです
一気に・・・ではなく、コツコツと、少しずつ借金を返していくということから、誤用されてしまいがちな「物事を一気に進めてしまうこと」や「曖昧にすること」という使われ方は正しいものではないということがわかりますね。
誤ってネガティブなイメージをもってしまいがちな「なし崩し」という言葉ですが、もともとの使い方を理解しておくと、「借金を少しずつなしにしていく」、「借金を少しずつ片づけていく」という、結果的にポジティブな意味合いになる言葉なのです。ネガティブな文章でも使われることがありますが、使い方は後述したいと思います
「なし崩し」の語源は?
なし崩しの「なし」は、もともとは「済し」と書き、「返済」の意味だったのです。
そして、返済を少しずつ果たしていくことを「崩す」と言い、ここから借金を少しずつ返していくこと、物事を少しずつ片づけていくことをなし崩しと言うようになったのが、なし崩しの語源になっています。
なし崩しの使い方
それでは実際になし崩しを文書等に取り入れるにはどのような使い方をすればよいのでしょうか?
ここからは「なし崩し」の使い方を、間違った解釈がされてしてしまうことの多い例文とともにご紹介したいと思います。
【これまで発言を封じられていた外様雄藩が物を言いはじめ、京都朝廷や攘夷派の志士たちが物を言いはじめたのも、そこからはじまっている。いわば幕府は、自分が握っていた権力をなし崩しに失ってきたのだ。 幕府の前に立ち現われた時勢がそうさせたと言える。】
引用元:藤沢周平『回天の門』
この文章にある「自分が握っていた権力をなし崩しに失ってきた」というのは「徐々に失っていった」という意味合いなのです。
徐々に失い、結果的に権力をすべて失ってしまった。というのは、語源となったポジティブな意味合いとは反対のネガティブな結果としての使い方ですが、「(結果に向かって)少しずつ〇〇したため、結果全て〇〇となった」という使い方になることが分かる文章です。
ここから誤用されることの多い「一気に〇〇してその結果へと物事が進んでいくさま」とは意味合いが大きく異なることも分かりますね。
【計画がなし崩しに変更される】
「計画がなし崩しに変更される」というのは、「悪い雰囲気のまま、物事が曖昧になっていく」というネガティブな意味合いで誤用をされることが多いのですが、曖昧なまま物事が終わらないのではなく、最終的に「計画が済んでいく」状態を言い、「計画がなし崩しに変更される」という表現の場合は、計画がその都度変更されていってしまう・・・という状態ではなく、「計画の方向性を大きく変更するために、少しづつ修正を加えて、前に進めていく」というポジティブな意味合いになります。
ポジティブな意味合いのものをネガティブに捉えてしまう・・・なんて、もったいないですよね。仕事でも使われることのある言葉なので、正しい意味を理解しておきたいですね。
まとめ
誤用されていることの多いなし崩しという言葉の正しい意味、語源、その使い方を説明しましたが、参考になりましたでしょうか?
なし崩しとは「徐々に物事を進めていく」という意味で、「一気に物事を進める」、「物事をうやむやにする」といったネガティブなイメージは、その言葉自体には含まれていないのです。
正しい意味を、語源とともに理解してなし崩しの正しい使い方をして下さい!